そして去り際、一つだけティーロに聞いた。
 
「あの、ティーロさん? 一つ訊きたい事がある……‘少年’が気にしていたが、君の“前職”は?」
「わし……いや、私は元傭兵です。まぁ、衰えみたいなのが少々自分で感じてしまいこの職業にね」
「はは、答えはある意味想定範囲内たっだ。休みは二日前だったから三日間は出勤、休みは次の日か……では失礼する」
 
 ‘戦い’の場所にいた者と分った時、レイはティーロに一瞬‘助けて欲しい’と言いたげな瞳の色を見せた。
 
 ティーロは‘心の叫び’を読み取ってしまった。何となくだがそうにか欲しいというその黒き瞳を……
 そして子どもの存在の違和感を、初日の時点でもっと気付いてやればと悔やんだ。

「じゃあ、やる事があるんだ。“時間”もうあまりないから……」
 
 そう言って休憩室を去るレイの姿には、元とはいえ傭兵であったティーロに“小さい光”を見つけた。
 
 そして又、ティーロはそのレイの“葛藤”を読み取ってしまった。
(性分と言ってしまえばそれまでだがな……)

 ティーロもコーヒーを飲み終えたらいつもの位置に戻り、いつものように挨拶と敬礼をする。
 しかし、頭の中では先程のレイとの短い会話を繋ぎあわして、元傭兵だからこそ想定できる内容を想像し考えている。
 
 それは想像通りでもありそれ以上だったことを、ティーロは明日事実を知る事になる。



 その後自室のベットの上で三時間ほど携帯ゲーム機をさわるレイ。
 
 少ないながらティーロにその事実を伝えるために……
 パソコンもテレビゲーム機もネットに自動的に繋がる部屋なのだから。
(監視されていないものは、これだけしかもう思い当たらない……)