顔を確認したらエスカレーター中央に立っている警備員だと分かった。

「申し送れました、私の名はティーロ。警備員の名前までは知らないでしょう? そういえば今日はあの子どもは一緒じゃないのですか?」
「予防接種をして部屋からは出られない。子どもはすぐ走り回るから……」
 
 辺りを見回しながら人懐っこく話すティーロ。

 レイはアザムの話をしたい気分ではなく、冷たい瞳はティーロを刺すように見る。
(とりあえず、これで他の席にでも行くだろう……)

 
 しかしティーロはコーヒーを買って戻ってくる。それも勝手に目の前に座って、さっきより気軽に話しはじめる。

「あの子中東辺りの少年ですよね。貴方に懐いているけど引き取り手ですか?」
「……え?私ではありませんよ」
 
 驚いてしまい思わず答えてしまうレイ。
 
 一言も話していないのにアザムが中東地方の子供だと気付いた事と、アザムが“兵士さん”と言っていた事ことを一瞬脳裏をかすめた。

「へえ、ゲームとかするんですね。あっ! わしもこの‘トレバ’が好きで、ほらキャラに自己紹介と酒場掲示板もあるでしょ? 知り合いと一緒に出来るので使い方で友達との伝言ノートにも使えますしね」
「私も少し古いが気に入っているから。……自己紹介とかも書き込めるしな」
(酒場なら王都から新しくキャラを作れば近くにある……か)

「あ、申し訳御座いません。会社の上の方に馴れ馴れしく話してしまって、それもゲームって――」

 素で話てしまっていた事を気付き、苦笑いを見せるティーロに優しく笑みを返す。

「別にかまいませんよ。気にしなくて結構です」
 
 何かを思案しながら少し会話を返すレイ。休憩所が見学客で増えてきたため、レイはコーヒーを一気に飲んで立ち上がった。