そして次に続くティーロの言葉。

「ベリル殿、今日ここに来たのは他の理由があるんじゃ?」

 FBIに拘束されたのであれば、今ここに無事で居る事はありえない。

 製薬会社は国が問題をもみ消す形で倒産した。そして、社長を含め上層部や開発に携わった人間はFBIに拘束された。

 テレビや新聞で倒産ということが大きく載っていたので、ティーロもレイも知っている。
 
それも、国家機密に関り裏切ったとされる上層部の人間ならなおさらだとティーロは考えている。その事はレイも自分が無事な事を不思議に感じていて、ティーロと話していた。


 レイはFBIから罪を問われる事も無く解放され、一枚の“この場所に来るように”という言葉の手紙。


「……私を助けてくれたのはベリルさん貴方ですよね? 普通なら出られる訳はない」
「アザムを今後見てくれる人間が必要だ」
「わ、私にアザムをと? 私はこの子を道具として使おうとした罪人ですよ!?」

 ベリルはレイに強い口調で言い返す。

「私はお前を助けた訳ではない。 だからこそ、お前は自分が一瞬でも利益のために利用しようとした人間に許してもらう事に、必死で向かい合う事が罪滅ぼしなのでは?」

 その言葉に言い返せないレイに、アザムはゆっくりと近づく。

「それでも、レイさんが行動を起こさなければ、ボクはここ生きていないかもしれない」
「……アザムは、こんな私を許せるのかい? 私は君を……――」
「赤い石を入れたのはレイさんなんでしょ? それが貴方の本当の心なら、ボクはレイさんとちゃんと向き合って生きていきたい」

 レイはアザムの真剣な言葉を深く受け止める。大人が決め付ける許す許さないではない答えを、垣間見た気がした。