何も言わずにベリルは裏口から入ってゆく。それに後ろから付いていくアザムの姿。

 二階に上がり言われた部屋の手前まで来る。ベリル後ろを振り向き一度アザムを確認する。

「……ボクは、大丈夫」

 緊張が見え隠れしてはいるが少年の瞳は覚悟が出来ている。


 そして、ベリルはティーロが居る部屋の扉を開くと、ベッドの背を上げて座っているティーロと椅子に座っているレイが居た。

 

 数秒の間があった。全員の心情が交差している瞬間だったのだろう。

 まず口を開いたのはレイだった。
 椅子から立ち上がり深々とお辞儀をし、そのまま話をし始める。

「ティーロがその後ベリルさんに託した事を、先ほど詳しく聴きました……本当に申し訳ございませんでした」

 レイが顔を上げた瞬間ベリルの平手が右頬に入った。ベリルのエメラルドの瞳はレイの黒い瞳を見つめたままだ。


 
 アザムとティーロは驚いた。止めるべきはずがその雰囲気に一言も出なかった。

「自分がした事の重さ、アザムの苦しさはこれくらいではなかった……」
「くくっ、よく分っているじゃないか?」

 ベリルは小さく笑っているが瞳は全く笑っていない。
 又レイもそれを真剣に受け止めている……返す言葉が無く俯くレイの姿。

「……お、おじさん」 

 アザムはベリルの上着を引っ張り、首を横に数回振る。