そして二日後の朝、この大学病院から出られる日。

「よし、アザム用意はいいか?」
「うん!」
 
 ベリルはそういいながら、パソコンのデータを消去している。
 
「うむ、お前の頭の中も消したいものだが……」
「ベリル、無茶言わないでよー! 本当に僕でも、理解が出来なかったんだから」

 アザムのウイルスの原型は仮に理解できたとしても、それ以上は携わった者にしか理解不可能だろう。
 
 それに知る必要も無い。
 このことは全て闇に葬るためにベリルは数日前の夜に動いたのだから。

「リッキーさん、本当にありがとうございました」
 
 お礼を丁寧に言うアザムにリッキーは首を横に振る。

「こちらこそ、不謹慎かもだけど貴重な体験をさせてもらったし、それに……いや、何でもないです」

 リッキーは研究者の探究心よりも大切な“何か”を見出せたお礼を言いたかったのだが、照れくさくなり誤魔化した。


「じゃあ、行くとしようか……リッキーすまんな。後、学長には宜しく伝えておいてくれ」
「OK、伝えておくよ」

 そして、アザムとベリルは約一ヶ月過ごした大学病院を後にした。