症状が出てから八日目、基本的に体に現れていた症状が治まった。


 そしてアザムは少しぼーっとした状態ではあるが、しっかりとした意識がある状態で目覚めた。しかし体力と筋力の低下のためベッドで起き上がるのも辛そうにしている。

 ベリルはアザムの症状が治まった事と意識を完全に取り戻した事に少し安堵の表情を見せた。
 
「無理してはいかんぞ」
「うん……」

 そう言ってベリルはパソコンのある机に向かう。
 だが、点滴スタンドを握りベリルに近づくアザム。ベリルが見ているパソコンに映る線状のものを見る。

「……これが、ボクの体の中のウイルス?」
「ああ、後二、三日で体内からは完全に消滅するだろう」
「おじさんは本当に大丈夫だったんだね」
「ああ、そう思うと本当にお前は、よく頑張った。そして、試練に勝ったのだよ」
「――違うよ。おじさんや皆がいてくれて、ボクのために真剣に向き合ってくれたからこそ、ボクは今ここにいる」


 少し驚いた顔をするベリルに、小さく苦笑いを見せるアザム。

「ボクはもう誰も信じない、信じてはいけないと思っていた。おじさんの事もずっと信じてはいけないと、どこかで思っていた」

 一度の苦笑いを見せたベリルは、エメラルドの瞳でじっとアザムを見つめる。

「おじさんはボクの作り上げた壁を何度も何度も叩いてくれた……ボクが答えるまでずっと」
「私はお前ではないから、お前の全てを分かってやる事は確かに出来ない。だが自分に重ねて想像する……相手の心をな」
(同じになれなくとも“人”だからこそ理解し重ねられる心――)