私立緑先高校のキングと言ったら、2年の一条 暁のことを知らない人はいない。




成績は進学校である緑先高校でも、学校始まって以来の優秀。




綺麗な顔立ちに黒い髪と瞳に魅力される女子も絶えない。




少し人を見下したような笑みも魅力的すぎて、キングとして一目置かれる存在だ。





「おう、キング。朝から派手だな。」





席についた暁に近づいてきた、深いブラウンの短髪の男子。





「悠都(ゆうと)、嫌味かよ。」




暁がうんざりと言った顔で返す。悠都と呼ばれた男子は、田宮 悠都 (たみや ゆうと)。サッカー部に所属する、見た目通り、性格も爽やかな男子だ。




媚びたり、敵意を向けるかどちらかしかない生徒のなかで、暁に好意を示し、仲良くしている、唯一の男子。





「あはは。そんな怒んなよ、暁。」





悠都が並びのいい歯を見せて笑う。





「暁、お前、猫なんて飼ってねぇだろ?その顔の傷、何?」




「あぁ、おもしろい猫見つけて、な。」




暁がくすっと笑う。




「猫、ねぇ。なるほど。」




悠都が何かを察したように言う。




「まぁ、せいぜい嫌われないようにね。その猫ちゃん、手強そうだし。」