彼女は上目遣いでこの男の顔色を伺っていた。
彼はそれを手に掴むと「ふむ」と触り心地を確かめていた。とても綺麗で艶のある黒いマフラーだ。


「どうだ?」

彼はもう一つのクリーム色の毛糸で細かく編まれたマフラーを俺に手渡した。

手に持つととても温かかったので、正直に「あったかい」と答えた。彼は「そうか」と言うと、視線を彼女に戻し「貰う」と言ってお札を四枚差し出した。


「ありがとう、助かった。釣りはいらねぇ」


そしてマフラーを巻いてその店を立ち去った。彼女はうっとりとこの男の後姿をいつまでも眺めていた。


俺の着ている服は結構薄手で、とても寒かったが、彼のコートに包まれて、彼に買ってもらったマフラーで温められたのはいいが頬が焼けるように痛かった。