俺はもう店を閉めようとしているんだから無理だろうと思っていた。彼女は思った通りにめんどくさそうに顔を上げた。

「お客様…」

しかし、言葉は彼女と俺を抱き上げる男の目が合った瞬間に止まった。彼は「ん?」と小首を傾げる。

途端に顔を真っ赤にした彼女は、あたふたと慌て始めたのだった。

「こんな寒いですものね…!仕方ないですよね、どんなものをお求めですか?」

早口で言った言葉を彼はやんわりと返す。

「手触りのいいものを。それと俺に似合うもの。それからこの子の分も」

「かしこまりました!!」

彼女はお辞儀をしてパタパタと店内に入って行った。擦れ違った少し太った中年とぶつかりそうになりながらもいそいそと用意をしていた。
中年が何か言っていたが、彼女は完全に無視だ。
そして五分もしないうちに彼女は戻って来た。

「こちらで…よろしいでしょうか?」