「この甘えん坊が」

彼は言いながら腰を曲げて前かがみになる。そうすると俺は落ちないように必死で彼の首に両手を回してしがみ付かないとならない。
初めこそ、怖がった俺だが、今は慣れたもので楽しみの一つだ。

「きゃ~~!落ちるぅ!パパン落ちるぅ~~!!」

「落ちてしまえ。おはようのチュウもしてこない悪餓鬼め!」

さらに屈む身体。なんて柔らかい。俺の前髪が完全に後ろに下がる。

「ぱ~ぱ~ん~~!!」

「なんだ?」

ニヤニヤと聞いてくる彼。だが頭に血が上っている俺にとってそんな事を気にする暇も
なく。

「もどしてー!!」

プルプルとつま先を震えさせながら訴えると彼はようやく正しい姿勢をとってくれた。
だが、急にぐるりと頭を回されて視界はクラクラして中々定まらない。そんな俺に彼はクスリと笑って、ポンポン、と背中を叩いてやり、椅子に座った。