きゃはは!と笑いながら、子供は外に飛び出した。

「またね!カイトおじちゃん!!」

「ああ、またな」

子供は大きく手を振って別れを告げた。
カイトはそれを穏やかに見守っていた。


「あれから。もう20年も経つのか……」

カイトは瞳を細めて昔を思い出していた。


「ユウ、お前はどこに行っちまったんだ」



あの日から誰一人として姿を見たものはいない。
まるで、この街の伝説のようになってしまった。


まるでそれはこの歌の生贄の女のように……。


「……でも、きっと幸せに暮らしてるよな!」


そう。消えたのは三人。


ユウの家族のような人達と共に消えた。
一人ではないのだ。


きっと、どこか遠くで幸せに暮らしているに違いない。



歌のマイフェアレディという人も、きっとどこかで幸せに暮らしていると思っている。
だって。


きっと。あの岩を削っても生贄の女は出てこないだろう。
消えてしまっている。


あの三人のように。


消えている。