「先程連絡があった。幼い子供が血まみれで逃げている様子だったと」

一人の男は警察らしい格好をしていた。

すると、どこからか別の男が叫んだ。

「おい、あいつ…あの格好……!!もしかしたら黒い死神って!!」

「そうか、そうに違いない!!あんな幼い子供にまで手を出すとは!!」

「最低な人間だ!」

「捕まえろ!」

「待て、子供を人質にとっている!!奴の手を見ろ!銃が握られているぞ!!」



ユウは違う!と叫びたかった。


だが、ユウにはもうそんな力は残されていなかった。

ただパクパクと口を動かすだけ。

そんなユウをロードはゆったりと笑って唇を突いた。
その顔にはもう涙の跡はどこにもなかった。

ただ、穏やかに笑っているだけ。


「ユウ」


ロードは落ち着いた口調でユウの名前を呼ぶ。
ユウはロードを見上げる。


「俺と来るか?」

不敵に笑うその笑顔が。初めて出会った時を思い出し、ユウの心をくすぐった。
クスクス笑いながらユウも応える。

「俺は、パパンを一人ぼっちには、させないよ……?」


その応えにロードはとろけるような優しい笑顔を溢した。
ユウも同じように笑った。




そして、



銃声が二つ闇に響いた。