早く走る事に慣れているユウは、風のように走った。
例え真っ暗なこの道も月明かりで充分に道がわかる。

どれだけこの道を往復して来た事か。


ランもそう思っているだろう。
ハッハッハと呼吸を一定にして白い空気を吐き出している。

手綱を握っている手が痛かった。

見ればそれは真っ赤になっていて。知らず鼻水が出ていた。
ユウはハーッと息を吐く。


寒い。


凍てつくような寒さだ。しかもユウはあの大きなシャツ一枚しか着ていないのだ。
そして。

「うぐっ……!!」

ズキリと腹が痛くなって片手で抑える。見れば、手が赤く染まっていた。

(傷がッ……)

それでも、止まるわけにも行かない。後ろを振り向く余裕は無い。けれど確実にあの五人は追いかけてきている事だろう。

ユウは歯を食いしばって痛みを耐えた。