それとは反対に子供達は真っ青に顔を染める。
「……っ!!」
ネオードはフィルを抱えてロードの後ろに隠れた。ブルブルと震えて、壁にフィルを押し付けるようにして抱き込む。
ロードはレオンも後ろに隠すと子供達の前で両手を広げるようにして近づいてきた男の前に立ち塞がった。
まるで光の無い目をした男だった。
細くしゃがれた顎が印象的で幽霊のようにヒョロリとしている。
「どけ」
たった一言呟くとバシッと腕で払われるように殴られ、ロードの身体は軽く吹っ飛んだ。
ガッとネオードの背中を掴むと引きずり出してフィルの腕を捕らえる。
「やめろ……っ!やめてくれ!!」
ネオードは泣きながら訴えた。無理矢理立たされたフィルがズルズルと引きずられる。
ネオードは動かない体を叱りつけ四つん這いになって追いかけるが、途中でぐしゃり崩れてしまう。
ロードは軽い脳震盪を起していてグルグルと視界が回っていた。
「ネオ……ね……お……」
フィルがか細い声を上げる。
叫ぶでも、助けても、痛いとも、苦しいとも。
何も言わない。
ただ、ただ。
兄の名前を呼んでいた。
「ねお……ね…お…ね……」
何ども。何ども。
フィルは中年の男に差し出される。
「随分痩せ細っているが……まぁいいだろう。殺して薬に浸けとくか」
中年がフィルを引き取り、食べ物が入った袋を手渡す。
「じゃあな」
馬車が走っていく。
「かえ……せ……返して…くれぇっ!!…返せ!返せよぉ!!フィルーー………!!」
精一杯出した声も枯れていく。
ただ、倒れたネオードは床に涙の染みを作っていく事しか出来ない。
ロードもそんなネオードに何も声を掛けてやれなかった。


