My fair Lady~マイフェアレディ~

何も聞いてはこなかった。


ただ。俺に笑ってくれた。


すっと目を閉じて、また開く。


「パパン」


「ん?」


「帰ろう」


サラリとやわらかい風が俺と彼の髪を揺らした。

「ああ、そうだな」

彼は俺の車椅子を方向転換させると歩き出した。
カラカラとタイヤが回る。


ツキンと腹が痛くなってそっと撫でた。


まだ。
まだだよね。


なんだかカイトを見ていたら。

諦めたくなくなっちゃったよ…。



「まだ…だよ」





まだ、真実にたどり辿り着いていない。