今でも覚えている。
暗い暗い所で震えている俺の元へ歩を進めて彼はやって来た。
少し屈んで俺に手を差し伸べた漆黒の男。
忘れられない。貼り付けたような笑みが。

『さぁ、おいで』

彼の声。
頭では警報が鳴っていたのを覚えている。だが、その時俺の顔に恐怖は無かった。
その手を取らなければ俺は死ぬ。
それだけはわかった。