朝、いつもの通りに起きた。
朝食時に彼はフランスパンを齧ってからポツリと言った。

「今日もネオードの所に行くのか?」

「……うん。パパンは?」

どうしようか迷った末に。どっちにしろ家にいても仕方が無いと思って俺は彼の言葉に頷いた。彼は俺の質問にコーヒーを一口飲んだ後に答えた。

「俺も出かける」

「そう…」

まるで、冷めた熟年夫婦のようだと俺は思った。でも、朝の気だるさも混じって無理矢理テンションを上げる気には到底なれなかった。


食事を終えると俺達は同時に家を出た。

「じゃあ、行って来るぞ」

「うん。気をつけてね。俺も行ってきます!」

俺が駆け出そうとした時。彼は「ユウ」と一言で俺を呼び止めた。
俺が振り向くと彼はまた一つ言葉を落とす。

「街には行くなよ」

「……わかった」

俺は数秒の間の後に答えて、駆け出した。


彼は俺の後姿をずっと見ているようで。痛いほどの視線を背中に感じていた。