「ぱ…ぱ……ん…?」

「なぁユウ」


それでも声色はいつもと同じで、俺は彼の口元だけを見ていた。

「お前、俺に嘘をついてないよな?」

俺の口が無意識に動こうとしていた。
俺は思いとどまって唇を堅く結び、改めて口を開いた。


「ついてないよ」


思ったよりもハッキリと出た言葉に、彼はしばし沈黙した後、「そうか」と言って俺を解放した。

それから、何もおかしな様子もなく俺達はベッドに入った。

不思議な事に、俺は彼の腕の中でこうして毎日眠っているのだ。
昔からの馴染みのせいもあるのだが…こう抱き締められて眠ると安心する。


矛盾していると、自分でも思っている。
けれど、そうなってしまうのだから仕方が無い。


どこか。自分の心にあるんだと思う。
彼を未だ憎みきれずに、愛しさを引きずる心が。