また彼は俺を呼んだ。
俺は応えない。

カタンッと音が響く。
恐らく彼が調理器具を置いた音だ。
そして、足音。
カタン、カタン…先程の音と違う。木の床を踏み締める音。
ゆっくりゆっくり。
獲物を追い詰めるように。逃げられない獲物に恐怖を与えるように。
カチャリとドアノブが回る。
ギッと開かれたドアの前に。美しい男が立っていた。

「ユウ」

男は床に座る俺を見てニッと笑いながら呼んだ。
漆黒の瞳と髪。黒い服。
彼の微笑みも黒々しい。


「飯だぞ」

「わかったよ。パパン」


男の手招きに俺は歩み出した。