そうこうしているうちに、時刻は既に9時半を過ぎ。

なにも起こらない状況に、短気な俺が苛立ち始めたころ、向こうから、黒づくめのジャージを着た人影が近づいた来た。

目深に野球帽をかぶって、ネットに入れたサッカーボールを肩から下げ、その走る様子からだけじゃ、男か女かもわからねぇ。

真っ直ぐに走るその姿は、軽やかで、ついつい見惚れちまうような走りっぷりだ。

そいつが気付いたように顔を上げ、帽子のしたから日に焼けた目ばかり大きい奴の顔が俺に向かって微笑んだ。

宮古麗。

男前な女。