「マイ」

その呼び声に振り向くと、直ぐ後ろに雄一が立っていた。

舞の座る椅子の背に両手をかけ、舞を覗きこむように話しかける。

「今日さ、部活中止だって。だから、一緒に帰ろ」

その左手の薬指、うん、確かに指輪が光ってる。

「あっ、これね、ペアリング」

あたしは、無造作に雄一の左手を掴むと、おもむろにその指輪をマジマジと眺めた。

「だんだよ、ナギサ、乱暴だな」

雄一はあたしの掴んだ手を振り払うと、舞の椅子を割って無理やり腰掛けた。

「で、シノブとは仲直りできたの?」

「うん、まあ」

「良かったじゃん」

「ナギサもね、あたし達みたいにペアリング欲しいんだってぇ」

「ふぅ~ん。ナギサでもそう思うんだ。マイだけかと思ってた」

「女の子ならねぇ、普通だよねぇ」

舞が雄一をちょっと睨みながら、あたしに相槌を求める。

「うん、そうじゃない」

「なら、ナギサもシノブにおねだりすれば?」

「引かれるよ。あたしらしくないもん」

「そんなことないんじゃない? たまには素直になってみれば?」

いつになく真面目な顔で雄一が言うもんだから、あたしもついつい、雄一の言葉に耳を傾けた。