「あたしもね、ほら、これ、見て!」

舞が嬉しそうに、左手の薬指を掲げて見せた。

「あ、指輪?」

「うん。雄一がさ、ホワイトデーのお返し何がいいって聞くから、指輪がいいって言ったの」

「ふぅ~ん」

あたしは、舞の手を取って、その薬指にキラキラと輝く指輪を見つめた。

「で、どうせやるなら早い方がいいだろって、昨日、貰っちゃったぁ。これ、雄一とお揃い、ペアリングなんだよぉ」

嬉しそうに目を細めて、舞が惚気る。

「いいなぁ、雄一は気が利いて」

「ナギサもシノブにねだっちゃえば?」

「そんな可愛らしいこと、あたしに出来ると思う?」

「うぅ~ん、ちょっとハードル高い?」

「かなり」

「だよねぇ。そうだ、雄一からそれとなく言って貰う?」

「いい、そういうの、なんか嫌」

あたしは、静かに首を横に振った。

「それに、ペアリングなんて、なんかシノブらしくなくて、笑っちゃう」

「だよねぇ」

あっさり頷く舞の仕草に、ちょっとむっとはしたものの、今のままで十分じゃない、と自分を納得させてみる。