「お前、誰だ?」

俺はやっとのことで、そう奴に聞いた。

「あたし、宮古麗(ミヤコレイ)。
城西の一年だよ。
ハハ、彼女はやっぱり遠慮しとく。
あんたもその気、ないみたいだし」

「なま言ってんじゃねぇよ、一年が。だいたい俺の名前はタカギじゃなくて、『タカダ』だ!」

俺はそう言うのが精一杯だった。

「えっ、あっ、そう、ごめんなさい」

だって、似てるんだも~ん、と奴は全く悪びれない。

「でもさ、お願いがあんだ。あたし、土曜の午前中、荒川の河川敷で練習してんだけどさ、できたら付き合ってもらえないかな?」

「は?」

「大橋のとこだからさ。じゃ」

って、それだけ言うと、そいつは走って女子軍団を追いかけていきやがった。

呆けた俺を置き去りにして。


宮古麗。

スレンダーで背の高い、少年のような体つきの女。

髪はやや長めのショートで、肩の少し上で軽くハネている。

顔は細面で、日焼けしているせいか、大きな目ばかりが目だって見えた。

なんか、城西っぽくない奴だな。

で、練習って何だ?

俺は、その日以降、その宮古麗について思いを巡らすことになる。