~渚の場合~

なんかいつもとかわらぬ普通の関係に、驚いていた。

彼女になったら、もっと、特別なことしたり……とか、正直、身構えていたんだ。

デートだからって、なれないスカートなんて履いてみたりして……

本当は、覚悟してたんだ、あの日。

もしかしたら……って。

『わかってるって、今日は凄い綺麗だって思ったし。
だけどよ、何時までもそんな括弧で側にいられると、俺、変な気持ちになっからよ、やっぱ着替えてこいよ』

そう言って、優しく、キスを一つだけくれた忍。

嬉しかった。

あたしの身構えてた気持ち、わかってくれてたんだなって。

忍は何時だって、自分を偽れない。

正直なんだよね。

『なぁ、ナギサ、お前、俺に何でも言えよ。
別に遠慮することねぇからな。
まぁ、正直ムカツクこともあるかもしんねぇけど、俺はナギサとこれからもずっと一緒にいてぇし。
だから、良いことも悪いことも、ひっくるめて、お前の考えてること知りてぇんだよ』

ちょっと、猫かぶって、かしこまってた自分を見透かされた気がした。

そうだよね、忍が好きだって気持ちと、あたしらしいってことは、現在進行形で存在するわけで。

『指輪のことだってよぉ、確かに敦に言われたってのもあんだけど、お前があんなに喜ぶって判って正直驚いて、だから、つまり、俺はそういことに疎いからわかんねぇんだよ、言ってもらわねぇとさ』

忍のそういう、真っ直ぐなとこが好き。

見かけはゴツくて、取っ付き難いけど、

ほんとは、誰よりも優しいんだよね。