駅前の時計は、既に二時半をとうに過ぎていた。

やっぱ、俺、待ちぼうけ?

と頭に浮かぶのは、さっき見た麗らしき後姿。

やっぱ、あれ、麗だろ?

なんで逃げた。

あっ、まさか渚ちゃんのこと誤解したとか?

忍もいたのに?

ま、あいつ馬鹿だし、肝心なとこは見てねぇかもしんないし。

ザワザワと騒ぐ胸に、

俺を誤解して去っていった女達の言葉が鳴り響く。

「ごめん、なんかタカダくんの隣りにいるの疲れちゃった……」

「楽しかった。好きな人が出来たから別れて。ごめん」 

「タカダくんて、誰にでも優しいから、勘違いしちゃうんだよね」

麗、お前もかよ……

何勘違いしてんだよ、俺はお前を待ってんだつぅの。

以前の俺なら、そっか、仕方ねぇな、とあっさり諦めていた。

諦める?

何を?

今の俺は、そっか、とは簡単には納得なんかできなくて、なんか無償に腹が立って、麗の背中を追うように、彼女の家目指して歩き始めていた。