俺だってこれからデートなんだ、早くどっかへ行ってくれ。

「まっ、どうせ俺は当て馬だからね。で、そっちは? これからどちらへ?」

どうせ指輪でも買いにいくんだろう、と検討をつけ、ちょっと忍をからかってみる。

案の定、怖い顔して睨まれた。

忍、いい加減素直になれよ。

渚ちゃんはこんなにルンルン気分でいるんだぜ、お前がそんな仏頂面でどうすんだよ。

「シノブとね、ペアリング買いにいくんだ」

渚ちゃんが見かねて、忍の代わりに笑顔で答えてくれた。

「そりゃぁ、いい。ナギサちゃん、せいぜい高いの買ってもらいなよ」

俺は忍を無視と決め込んで、彼女に向かって笑いかける。

ほんと、渚ちゃんて、この馬鹿忍のことしか見えてねぇよな。

見てみろよ、忍、やっぱり渚ちゃん、喜んでんじゃねぇかよ、良かったじゃねぇか。

そんな俺の気もしらねぇで、

「で、お前はなんでこんなとこいんだよ」

と、反撃に出んとばかりに放たれた忍の言葉に、俺はハッと我に帰った。

そうだ、麗、何やってんだ?

「待ち人来たらず、ってやつ。俺って、やっぱ二枚目なのかなぁ」

このまま本当に待ちぼうけかよ、と今更ながら不安になる。

だいたい今何時だ?

「誰と待ち合わせてんだよ」

「ヒミツ」

誰がお前に教えっかよ。

俺は忍に冷たくそう言い放ち、サングラスをかけて後ろ向いた。

早く二人で、どこへでも行け。

俺に構うな。

じっと睨んだ横断歩道の先に、俺は駆けていく男前なスレンダーな後姿を見た。

あの走りっぷりは……

麗?