「あれ? もしかして高田くん?」

俺はさすがに名前を呼ばれて振り向いた。

さっきから、色んな女が色目を使って俺に声をかけてきて、そろそろこんな状況に辟易していた時だった。

「あ? 誰?」

ちょっとムッとして振り向くと、そこには、先日とは打って変って、女らしい装いの渚ちゃんが立っていた。

春らしいブルーのフェミニンな花柄のスカートにちょっと胸元の開いたカットソー、ベージュのジャケットを羽織って、足元のブルーのロファーがちょっぴりカジュアルさを添えている。

俺はサングラスを外すと、できるだけ普通に、彼女に向かって声をかけた。

「なんか、雰囲気違うね、もしかしてシノブとデート?」

俺の問いかけに、彼女は少し頬を赤らめて、

「うん、あのね、こないだの返事なんだけど……」

と俯きがちに言葉を繋ごうとする。

「あ、シノブから聞いたよ。付き合うことにしたんでしょ。良かったね」

俺もてるから気にしないで、と笑って誤魔化した。

「おい、敦、なにやってんだ」

聞きなれた声に振り向けば、今度は怖い顔した忍の顔が、俺の鼻先近くまでドアップで迫ってきていた。

「何って、きっちり断られただけ」

俺はヘラヘラと笑ってさらりと受け流す。

「あぁ、あれね」

「そうだよ、あれ」

わかってんなら聞くなよ。