「わかってるって、今日は凄い綺麗だって思ったし。
だけどよ、何時までもそんな括弧で側にいられると、俺、変な気持ちになっからよ、やっぱ着替えてこいよ」

そう言った俺の頭はその瞬間、渚にふわりと抱きしめられて、俺は渚の優しい香りに包まれた。

「そっか、ちゃんと気付いてくれてたんだ」

渚の肌を伝わって、その声が俺に届く。

「あたりめぇだろ。
つぅか、お前、俺が我慢してるっていうのに、俺のこと誘ってんのかよ?
思いっきり、胸、当たってるんですけど」

「あっ、ごめん」

渚が慌てて、俺から手を離した。

じゃ、あたし着替えてくるよ、と部屋を出て行こうとする渚を、俺は追いかけ後ろから抱きしめる。

「ナギサ……」

頭の上に唇をつけ、そう呟いた。

渚の身体がビクッと跳ねる。

「俺がどんだけお前に夢中か、今にわかるよ。とりあえず、今はこれで十分」

そう言って、俺は渚の身体をくるっと向き直し、その唇に小さく一つキスを落とす。

「ほら、着替えてこい。待ってっから」

頷く渚を見送って、俺は一人考える。

これは俺のプライドの問題だ。

渚に誘われて、流れで渚を抱くなんて許されねぇ。

その時が来たら、俺は自分の意思で渚を抱く。

思いっきし大切に、優しく、男らしく。

それが俺のプライドだ。