「そりゃぁ、いい。ナギサちゃん、せいぜい高いの買ってもらいなよ」

敦はそう言うと、渚に向かって超ジェントルな笑顔で笑いかけた。

なんだ、なんだ、この土壇場で、更に煽るか、このタラシが!

「で、お前はなんでこんなとこいんだよ」

何気に繰り出した俺の言葉に、敦のやつ、ふっと表情を変えやがった。

「待ち人来たらず、ってやつ」

俺って、やっぱ二枚目なのかなぁ、と何やら気弱なことをほざきやがる。

「誰と待ち合わせてんだよ」

「ヒミツ」

冷たくそう言い放って、敦のやつサングラスをかけて後ろ向きやがった。

「って、なんだよ、勝手にしろ!ほら、ナギサ、行くぞ」

俺は渚の腕を無造作に掴むと、駅前の繁華街目指して歩き出した。