何回かの信号をやり過ごした。

脚を前に進めようって思うんだけど、動けない。

そうしてグズグズしていると、アックンが綺麗な女の人に声をかけられて、サングラスを外すのが目に入った。

サングラスの下は、あたしの知ってる優しい笑顔のアックンだったけど……

なんか、あたしと居る時とは違う、照れた様子でその女の人と親しげに話すアックンを見て、またまたあたしの胸はキュ~ッと痛んだ。

どんどんと高鳴る胸の鼓動に煽られるように、目には涙が溢れてきて、もうアックンと彼女の姿は雨の日のガラス窓から覗いたように霞んで見えなくなった。


バイバイ、アックン……


あたしは、固い決意の下、手の平で涙を拭うと、踵を返し、もと来た道を駆け出した。

一瞬、アックンがこっちを見たような気がしたけど、あたしは振り返らず走る。

脚だけは速いんだ。

逃げ足じゃないよ、逃げたんじゃない、気付いたんだよ。

あたしはアックンには似合わないって。