駅まで10分ちょっとの道のりも、浮かれ気分で歩けば、あっという間だ。

あたしは駅前の横断歩道を渡ろうとして、その向こうに立つアックンを発見。

元気良く手を振ろうとその姿に意識を集中したとたん、
胸がきゅ~っと締め付けられるように苦しくなって、動けなくなる。

あれはあたしの知ってるアックン?

あたしが知ってるアックンは、サッカーしてるアックン。

城南の制服来た、先輩アックン。

土曜に見る、ジャージ姿のコーチ風アックン。

どのアックンもキュートな笑顔の優しいお兄さんで。

でも……

あそこに立ってるアックンは……

黒のジーンズに白のTシャツ、そこまでは普通なんだけど。

その上に黒の皮ジャンを羽織って、サングラスかけて、胸元には何やらごついシルバーのアクセなんかも付けちゃって。

どう見ても、括弧イイ大人の男、男の人だよぉ~

通りすがりの女の人が、みんな振り返ってアックンを見て行く。

どんなにお洒落して、頑張ってみても、こんなお子ちゃまなあたしなんて、アックンの隣りに立てない。

それより、なにより、
あたしは、アックンが怖いって思いで一杯になっちゃったんだ。