中毒な彼

「まだ出来てない人は、今日中に私の所に出しに来なさい。」

チャイムが鳴ると同時に先生が言った。

「んなん、書けるわけないやん。」

そうぼやきながら音楽室を出た。

5・6時間目の教科は、音楽の感想文を書くのに必死で、内容をほとんど覚えていない。

感想文が出来上がる頃には、いつの間にか放課後になっていた。

感想文が出来上がると同時に職員室へ猛ダッシュした。

職員室に入ると大和がいた。

国語の先生と何か喋っているみたいだったけど、何を喋っているのかわ分からなかった。

音楽の先生にプリントを渡した後、職員室を出ようと扉に手をかけた。

「操」

突然、真後ろから声が聞こえたので私は驚いて思わず肩が強張ってしまった。

「な・・・・何？」

振り向くと何故か怒った
顔をした大和がいた。

「まさかお前、窪田の所に行くつもりやないやろうな？」

「・・・・はっ！？・・・・そんなん行くわけないやん！」

少し焦り気味になりながら否定した。

「本間かぁ？何かお前焦ってない？」

眉間にシワを寄せて私の顔を覗き込むように顔を近づけて来る。

心の中で心臓が破裂しそうなほどの怖さだった。

「・・・別に焦ってへんし・・窪田君が言ったことはでたらめなんやろ？」

半信半疑で聞いた。

「そや。あいつの言ったことは全部嘘や。俺は素や。隠し事なんか一つもあらへんわ。」

大和は、きっぱり言った。

「だから、興味本位であいつの所に行っても仕方ないぞ。しょうもないでたらめ話を聞かされるだけや。」

釘を刺すような口調だった。

「・・・・よく分かった。・・・ご忠告どうも。」

その場の空気は、そう言うのが精一杯だった。

「・・・おう。」

大和の顔からは、まだ疑いの目があったけど、何とか切り抜けられた。

「・・・・じゃあ、教室に置いてある鞄を取って帰ろ。」

そう言うと大和は左手に鞄を持ち、右手に私の腕を掴んで教室に向かう。

「何で、鞄を持ってないことが分かったん？」

何となく聞いてみた。