中毒な彼

「操・・・起きろ。後、3分で授業始まるで。」

と大和の声が聞こえ、眠気が覚めないまま起き上がった。

「次の授業って音楽やから急げ。」

その言葉にぼーっとしていた私は一気に眠気が覚めた。

「やばい!移動や!!」

急遽、音楽の授業は、教室ではなく教室から1番遠い第3音楽室でやることになっていることを思い出し急いで非常階段を駆け上がり教室に猛ダッシュして教材を取りまた猛ダッシュで第3音楽室に向かった。

“キーコン”とチャイムが鳴ると同時に第3音楽室へと入った。

「遅いですよ。もっと早く来なさい。」

「すいません。」

これ以上、授業を遅らせる前にそそくさと自分の席に行った。

「じゃあ、号令して。」

その言葉を合図に号令が掛かる。

号令した後、先生が今日の授業内容を話始めた。

「今日は、ベートーベンの第九をビデオで観てもらって感想文を書いてもらおうと思います。」

・・・第九?

って何?

頭に疑問が浮かぶ。

「先生、第九って何ですか?」

1人の男子が聞いた。

「第九って言うのは、ベートーベン作曲の交響曲第九番二短調のこと。」

「どんな曲があるんですか?」

今度は、女子の1人が聞いた。

「そうねぇ・・・・代表的なのは“歓喜の歌”かな・・・。さっ、これにクラス・出席番号・名前を書いて第九の感想文を書いて。」

そう先生が言った後、A4サイズのプリントが回ってきた。

先生は、クラス全員がクラス・出席番号・名前を書き終わるのを待って曲を流した。

音楽が流れている間、ずっと窪田君が言ったことが気になっていた。

大和から“窪田の言うことを信じるな”と言われたけど、やっぱり気になる・・・。

“放課後、あの場所に行ってみようか・・・。”

そんなことを考えてる内に音楽が止まった。

音楽が止まったことで、私はある重大なことに気がついた。

・・・・・・

・・・・・・

感想文が書けてない・・・・

やばい!!

そう思った時は時、既に遅く1番後ろの席の人がプリントを回収していた。

「ごめん。まだ、出来てない・・・・。」

1番後ろの席の人がちょうど私の隣に来た時にそう言った。