「ごめんなさい。お母様。
私、つい夢中になってしまって・・・。」


機織の道具から足を下ろして、リディアは少し肩をすくめてみせる。


「いいえ・・・。

あなたを見ていると、あなたがここにいることは当然の事のように思えるわ。

その道具も、あなたに使ってもらってとても嬉しそうに見える。」


アーリアは優しく目を細めてリディアを見る。


「でも・・・ そのあなたが最近とても元気が無いように思えるのは、私の思い過ごしかしら。」


アーリアはそう言いながら、傍らにある深いグリーンの布張りの肘掛け椅子に腰を下ろした。

目の前に置かれた大きな横長のテーブルには、リディアが織った布が綺麗に巻かれて置いてある。

アーリアがその布をそっと手で撫でると、それはアーリアの手の温もりを感じたかのように淡いうす桃色の光を放った。

アーリアはその手を軽く握ると、表情を曇らせた。