リディアが手に取ったものを月明かりに翳そうとした時、窓の外からざわざわとした人の声が、小さく聞こえてきた。


(こんな真夜中に何かしら・・・)


「お父様、灯り点けるわね?」


リディアは、手にしたものを無意識にポケットにしまい、壁にある部屋のスイッチを点けた。



「ぁ・・・!!!」


次の瞬間リディアが目にしたものは、リディアが今まで見て来たどんなものよりも、残酷で悲惨な光景だった。



引きちぎられてだらりと垂れた、金モールのカーテン。

壁伝いに床までずるりと付いた、どす黒い血。

そして、その先に倒れているのは、リディアの父、国王アルフレッド3世だった。

その脇腹には鋭いナイフが突き立てられ、そこからは夥しい血が流れている。



「お父様・・・?!
こんな、ことって・・・!!」


リディアはガタガタと震える両手で口を押さえその場に膝を付く。

(いったい、誰が・・・
誰がこんな酷いことを・・・)