少女はわずかに小首をかしげ、しばらく何事かを考えているが、また、手にした杼(ひ)をピンと張られた無数の糸の間に通していく。

少女が筬(おさ)を打つ度に、わずかだがきらきら輝く青緑色の光の粒が、布の間に浮かんでは消える。


――コツコツ

扉を叩く音が機織の音と重なる。


「お母様?」


少女はその肌と同じように透き通る声で訊ねた後、垂れ下がる糸の間から中央の扉を覗き込んだ。


「リディア、入るわね。」


扉の向こうから、凛とした気品を漂わせる王妃アーリアが入ってくる。


「この部屋、すっかりリディアに占領されてしまったわね。」


オーヴの小部屋は、もともとアーリアが機織と染色のために作らせた部屋だったが、いつの間にかリディアのいる時間の方が長くなっていた。