「お、ユウリじゃねーか!

お前、今晩帰るんじゃなかったのかよ。」


ユウリはリゲルの港にある小さなバルにいた。

ドアに何の看板も灯りもないその店は、常連客しか来ることはない。

そして、ラドニアにありながら唯一、ロトスの人間でも酒を飲める場所でもあった。


「ああ。今日は疲れちまったよ。」


「追われたそうだな。」

潮の匂いのするツナギ姿の男はそう言うと、ユウリの隣にどっかりと腰を下ろす。


「ああ。参ったよ・・・。

なんでこう執拗に俺たちナユタを目の仇にするかな・・・。」


ユウリは、小さな丸テーブルに足を投げ出し、がっくりと頭を垂れている。


「噂だがよ。」


「あぁ?」