ラドニア国、王宮の最上階にあるオーヴの小部屋。

宮殿の屋根の部分にあたるそこには、大きな天窓から眩い光が降り注ぐ。

低い天井の梁からは薄青、緋色、濃紫、浅黄などに染められた糸が束になって下がる。

部屋のあちこちには、茜の根やブラックベリー、乾燥したオレンジの皮などが盛られた大きな籠が置かれ、芳しい草木の香りを漂わせている。


シュッ… トントン…

ギギ…

シュッ… トントン…

ギギ…



部屋のいちばん奥に置かれた古い機織りの道具で、一人の少女が一心に機を織っている。

陶器のように白い肌、漆黒の真っ直ぐな髪は腰まで垂れる。

少女はそのか細い手と、膝までたくし上げたスカートから伸びた足を器用に動かしながら、薄紫色の布を織り上げていく。


小気味よい機織りの音がしばらく続く。

少女は何度か同じ動作を繰り返した後、ふと手を止め、目を瞑り耳を澄ます。