ケインは思わず額に手を翳して目を細めた。

扉の間から、格納庫中央にあるジプサムの姿が覗く・・・。


「な、なんだ・・・あれは・・・!!」

唖然としたケインの声に、リディアはハッとして中を覗き込んだ。


「ぁ・・・・ あれが・・・・ジプサム・・・・?!」


床と天井に取り付けられたキューブ状の巨大な黒い支柱の間に巨大な鉱石が浮かんでいる。

それは、リディアの知るジプサムの姿とはかけ離れたものだった。

透明だったはずのその姿は、中央部が濃い灰色に濁り、その周りには黒檀の霧のようなモノが渦巻いている。

そのせいで、そこから放射される光には透明度が無く、まるで、幾本もの剣が四方に突き出されているかのように見える。


「こ・・・こんなことって・・・どうして・・・」

リディアはふらふらと扉の中に足を踏み入れた。


その途端、リディアの意識の中にゴーッという爆音と、黒く熱い衝撃波のようなものが押し寄せてきた。


「いやぁぁぁぁ――――!!」



リディアは頭を抱えて叫ぶと、そのまま黒いリノリウムの床に倒れこんだ。



「リディア様―!!」


ケインがその体を抱きかかえて叫んだ時には、リディアの意識はすでに闇の中に落ちていた。