「さ、ほんじゃそろそろ行くか。

みんながお待ちかねだ。」


「え?! ユウリ?」


ユウリはリディアをそっと抱きかかえると、天蓋をくぐり、バルコニーの方へと近付いて行く。


カラスがその大きな窓を押し開く。

待ちかねたように吹き込んだ風が、リディアの真っ直ぐに垂れた黒髪を揺らす・・・


「風が・・・」

リディアは思わず目を細めて息を吸う。


ユウリは、その足をバルコニーに付ける。

その途端、リディアの目の前に突き抜けるように青い空が広がった。


「空が・・・空があんなに・・・青い。」

見上げるリディアの目からは、いくつもの雫が流れ落ちる。


――その時