ロトス島の最北端、セルシオ海を眼下に見下ろすチドリー岬。

その中央部に、銀色の鳥は翼を広げて停まっていた。

まだ明けきらない朝の光が、その硬質な機体を白く輝かせている。

海からの風は、びゅうびゅうと音を立てながら、その機体の脇腹を吹き抜けていった。


リディアはその後部座席から、海の彼方に小さく浮かぶ黒い影を見る。


ラドニアへ飛ぶ・・・。

不思議に、恐怖は無い。

これから起こりうる事に対して、不安が無いといえば嘘になる。

けれど何故か、あのシュラムでナフサの話を聞いてからは、心が騒がなくなった。


リディアはゆっくりと目を閉じる。