「ねぇ、シスター、あの若者は何者なの?」

リディアは施設の責任者であるシスターの部屋の窓越しに、芝生の敷き詰められた広い中庭を眺めている。

そこには、子供達にせがまれながら渋々ハーモニカを吹いているユウリがいた。 

無愛想に見えるその表情とは裏腹に、奏でる音色は温かい。


シスターは、目を細めてユウリを見る。

「ユウリは小さい頃から父親と一緒にロトス島からの荷を運んでいました。 

ある時、輸送船の中で盲腸炎を起こしてここへ運ばれたのです。 

手当てが遅れていたら、助からないところでした。

それを、忘れずにいるのでしょう。

大人になってからも、こうして時々ロトスで採れた野菜や果物を持って来てくれているのですよ。」


リディアはもう一度窓の外を見る。


「・・・優しいのね。」