村は、まだ朝靄に包まれていた。

紫の屋根の家々は、その中にひっそりと佇んでいる。

どこかで山鳥が小さく鳴く・・・

地平線に近い東の空は、少しずつ薄桃色に染まり始めていた。



「行くのじゃな。」

ナフサは蔦の壁の前に立つ三人に声を掛ける。


「はい。

色々、お世話になりました。」

リディアは深々と頭を下げる。


ナフサは大きく頷いた後、

「ほれ、カラスとやら、大事な物を忘れておるよ。」

小さな麻袋をカラスに手渡した。


「あ、そうだ。」

カラスは懐を弄って始めて気付く。


「お前が命がけで採ってきたのじゃろ。」

ナフサは目を細める。