「え?!」

リディアは驚いて若者を見る。


「金持ちのお嬢さんは何もしらないんだな。

今のラドニアには金持ちも沢山いるが、死にそうなヤツも沢山いるってことさ。」


「やめるんだ!

リディア様、さあ、もうすぐ着きますよ。」


ケインは顔を強張らせたリディアの表情をミラー越しに見て取ると、わざと明るい声を響かせた。



車は 大きなサークル状に建てられたレンガ色の建物の手前で停まった。

中央には礼拝堂のある釣鐘型の屋根が見える。



「リディア様、私はまず荷物を運び入れますのでここでしばらくお待ちいただけますか?」

ケインは言いながらトランクを開ける。


「あら、荷物ならこの方が持ってくださるわ!」


「あぁ?! 俺?」