「あれが見えるかの? リディア。」

塔の最上階から見下ろす森は、まだ灰色に煙っている。

さわさわと息づいていた森が、今はまるで巨大な影のように音もなくそこに佇んでいる。


「森は・・・、死んでしまったのですか。」

リディアは唇を噛む。


「いや、カルマの森は死なぬ。

あの森は、人々の祈りで生かされておるからの。

だから、人々が祈る事を止めない限り、あの森は死なぬのじゃ。

そして永遠に、ジプサムを守り続けておるのじゃよ。」


「では、また息づき始めるのですか?」

リディアは、ナフサを見て訊ねる。


「すぐには無理じゃがの。 少しずつ・・・な・・・。」


ナフサは、ゆっくりとリディアに体を向ける。


「さて・・・。

もう話さねばならぬな。

何故、お前が此処へ来たのかを・・・。」