「さぁ、ここじゃよ。」


シュラムの村は、深い渓谷を渡る長いつり橋の先にあった。

村の周囲は、赤紫色の蔦のような植物で囲まれている。

それは、幾層にも絡み合いながら、人の丈の倍ほどもある壁を形成し、村を守るかのように立ち塞がっていた。


「なぁ、俺達も入っちまって大丈夫なのか?」

ユウリがナフサに訊ねる。


「構わんよ。
もっとも、さっきの騒ぎでおそらくは皆、祈りの儀式に入っているじゃろうがの。」


「祈りの儀式・・・ですか?」


「セシリアの精霊ジプサムに祈りを捧げておるのよ。

地下の祭壇での。」

そう言いながら、ナフサは右手を蔦の壁に当て、すっと横に滑らせる。

すると、その手の周りの空間がぐにゃりと曲がったように押し開かれて、そこに大人が一人入るくらいの穴が出来ていた。