「ケイン、急いで車を出して!」

ケインはバックミラーを横目で睨むと 何も言わずに車を発進させた。


若者は俯いて荒い息を吐いている。


「それで?あなたはどうして追われているのかしら。」


リディアは前を向いたまま、強い口調で訊ねた。


「! お前…」

若者は鋭い目を見開いてリディアを見る。


「分かるわよ。危篤の妹さんの所へ行くのに、そんな荷物は必要無いわ。」


「参ったな…。」

若者はブロンドの前髪に息を吹きかけると、シートにドスっと背を着けた。