黒のタンクトップにモスグリーンのパンツ、片手には大きな迷彩色のザックを持っている。


「リディア様、お怪我はありませんか?」


ケインが後ろの座席を振り向いた瞬間、前にいた若者は窓に手を掛け、そのブロンドの頭を車内に突っ込んで叫んだ。


「頼む!!妹が危篤なんだ!! St.マーガレット養護施設まで乗せてってくれ!!」


「お、お前、何を言ってるのか分かっているのか?!
この車は・・・」


「ケイン、乗せてあげなさい。」

リディアは、厳しい表情でケインを見る。


「し、しかしリディア様・・・」


「乗りなさい。 早く!私達もそこへ行くの。」


リディアは自ら車のロックを外し、ドアを開けた。


「悪いな。」

若者は ザックを座席の下に放り込むとシートに身を滑らせた。