Ⅹ(クロス)

「ぉ、おい! ちょっと待てよ、リディア!!」



――パンッッ


「うっ!」


ユウリはリディアの肩に触れようとして伸ばした手を、光りのベールに弾かれる。


(もう、始まっちまったのかよ・・・。)


ユウリは額に手を翳しながらリディアの後姿を見る。

その後姿には、一片の迷いも感じられない。


(頼む・・・。

頼むから、誰かあいつを守ってくれ・・・

頼むから・・・持ちこたえてくれ・・・!!)


バングルの嵌められたリディアの左手が、何者かに操られるかのように、光りの柱に向かって差し出された。

その瞬間、バングルから碧色の光りが噴出する。

それを待っていたかのように、柱から無数の太い光の糸がリディアに向かって一斉に放たれた。

その糸は、リディアの体を取り巻き、その内部へとその先端を滑り込ませていく。


「ぅぅ・・・」

リディアは、僅かに顎を横に逸らし、小さく体を震わせながら目を瞑ってそれを受け入れる。


(リディア・・・)

ユウリは思わずギュッと手を握り、その視線を草むらに落とした。