――バタンッ!



車のドアが閉まる。

リディアを乗せたジープは、ゆっくりと走り出す。

濃紺の闇は、拡がり出した白い光の粒によってその濃度を薄め、道や建物や木々や草花が、段々にその姿を見せ始める。

窓からは、朝露の匂いのする少し冷たい風が吹き込んで来る。



リディアは大きく息を吸い、それをふうっと吐き出す。

そしてギュッと目を瞑り、持っている茶色の袋を両手で胸に抱く。



(待っていてください・・・。

私は、もうすぐ・・・参ります。)